香典返しをしないケースは?

一家の働き手が亡くなった場合、寄付をした場合

葬儀に際して、香典や供物をお断りすることを明示した場合は、お返しの必要はありません。

あるいは一家の働き手を亡くしてその子どもが小さい場合などは、経済的な問題もありますから、お返しを省略してもよいでしょう。

また、いただいた香典を故人ゆかりの事業や社会福祉施設などに寄付をして、香典返しをしないケースもあります。

香典返しをしない場合でもあいさつ状は郵送する

それぞれの理由で香典返しをしない場合でも忌明けのあいさつ状を差し出し、遺児の養育費にあてる、寄付に代えるなど、それぞれの使途を報告するのがマナーです。

寄付に代えた場合は、文面にどこへ、どのような趣旨で寄付したかを明記します。寄付が故人の遺志であった場合はそのことも書き添えておきます。

また、寄付を受けた機関などからの感謝状や受領証などのコピーを添付しておけば、香典が有意義に運用されたとして、あいさつ状を受け取った人も安心することでしょう。しかし、一般 的に、香典返しをしないというのも水くさく故人の遺志ではなかったという話もよく間かれます。この点よく考えて礼をつくすようにしましょう。

社葬や団体葬の場合の香典返しは?

遺族が香典返しをする

社葬や団体葬の葬儀でも、香典は遺族に渡されますので、香典返しは遺族が手配することになります。

社葬や団体葬は規模も大きく、弔問客も多数になりますから、遺族といえども面識のない会社関係の弔問客が多くなります。そこで香典を受け取るときに、葬儀委員長などに香典返しの手配について相談しておくことも忘れないようにしましょう

香典返しを受け取ったら?

礼状は出さなくてもよい

基本的に、香典返しの礼状は出さないでよいとされていますが、親しい間柄であったり間違いなく品物を受け取ったという連絡をしたい場合は、少し日をおいてからはがきなどで間接的に知らせるようにします。

文面は、例えば「先日は丁重なごあいさつをいただき、恐縮です」などと受け取ったことの一文を添えながら、遺族のその後の様子などを見舞うようにします。

忌明けのあいさつ状の文例

仏式の文例

謹啓 御尊家御一同様には愈々ご御清祥のことと御慶び申し上げます。

過日母○○○○儀 死去の節には御多忙中にもかかわらず、御懇篤なる御弔慰と御厚志を賜り、誠に有難く厚く御礼申し上げます。

お陰をもちまして 本日四十九日忌法要を相営みました。

早速拝趨の上親しく御礼申し上げるべきではございますが、略儀ながら書中をもちまして謹んで御挨拶申し上げます。

敬具
 平成 年 月 日
 ○○○○

追啓 供養のしるしまでに粗品をお送り致しました。
何卒御受納下さいますようお願い申し上げます。

シャディショップでは香典返し、法要などのあいさつ状をご用意しています。ご相談ください。

神式の文例

謹啓 時下益々ご清祥の段 慶賀の至りに存じます。

先般母○○○○死去の節はご丁重なご弔問を頂き且つ霊前に過分の御供物を賜りご芳情の程洵に有難く御礼申し上げます。

本日五十日祭に際し心ばかりの品をお届け申し上げました。御受納下さいますれば幸甚に存じます。

早速排趨の上御礼申し上ぐべきはずのところ略儀ながら書中をもって御挨拶申し上げます。

敬具
平成 年 月 日
○○○○

キリスト教の文例

謹啓 先般母○○○○召天の際は御懇篤なる御慰問を頂き且つまた御丁重なる御厚志を賜り誠にありがたく御厚礼申し上げます。

本日諸式滞りなく相すませました。

就きましては霊前に賜りました御芳志殊の外辱く慈に心ばかりの品をお届けさせて頂きました。 御受納下さいますようお願い申し上げます。

先は略儀ながら書中を以て謹んで御挨拶申し上げます。

敬具
 平成 年 月 日
 ○○○○

Column

地方別にみる忌明けと香典返し

北海道地方

北海道は、一般的に忌明けは四十九日で、この日に僧侶を呼び、法要を行います。道南地域や沿岸部では、この日に「四十九日餅」という餅を祭壇に飾り、法要の後参列者に配ります。

香典返しは、道内のほとんどの地域が即返しで、香典の金額に関係なく、300~500円程度の品を贈っているようです。

東北地方

青森県では、忌明けは七七日でしたが、最近では三七日に繰り上げるのが一般化しています。

岩手県では五七日を忌明けとすることが多く、この日の法要に重点が置かれています。

福島県では、忌明けは七七日ですが、この日までは、餅をついてはいけないという習慣が県内全般にあったようです。

関東地方

茨城県では、七七日を忌明けとするところと一年目を忌明けとするところがあります。群馬県では、七七日を忌明けとし、四十九日餅を用意して寺へ納めたり、参列者に配ったりします。

群馬県の香典返しは、香典の金額に関係なく、一律三千円~五千円程度を即返しする例も見られます。

埼玉県では忌明けを「ぶくぬき」とも言い、四十九日目に法要と埋葬が行われます。

東京都では、忌明けは七七日で、この日に埋葬と香典返しを行います。

神奈川県・横浜市では、七七日に埋葬と香典返しをするのが一般的です。

関東地方では、香典返しの表書きは「志」や「供養」で、お茶や酒、海苔、シーツなど二~五千円程度のお返しが一般的です。

北陸地方

北陸地方の多くの地域では、忌明けは七七日ですが、一部の地域では、忌明けが男女で異なるところがあります。例えば、石川県や福井県の嶺北地方では、男性が七七日、女性が五七日とされています。

甲信・東海地方

山梨県では、忌明けは七七日で、四十九日餅を用意して寺へ納めます。

長野県のほとんどの地域では、七七日を忌明けとし、生活は通常通りに行いますが、実際に喪が明けるのは一年たってからと考えられています。

香典返しの金額は、二千円程度が一般的で、香典が二千円以下の場合は、お礼のはがきのみというケースが多いようです。

静岡県では、忌明けは七七日ですが、繰り上げて五七日にする家もあります。忌明けには、親戚 や知人を招いて法要を営み、香典返しを行います。金額は、半返しか三分の一程度。表書きは「志」にして、タオルやシーツなどの繊維製品や食料品などをお返しとする例が多く見られます。また香典返しを葬儀の際に返す即返しも多く行われています。

沼津市では、四十九日餅を菩提寺へ納めに行きます。

近畿地方

三重県では、忌明けは七七日あるいは五七日で、忌明けを「満中陰」「仕上げ」などと呼んでいます。七七日には「仕上げの念仏」という法要を行い、この日を目安に香典返しを行います。

松阪市の沿岸部では、お返しの品のかけ紙に故人の戒名を記した短冊を添える風習があります。

滋賀県では、七日ごとの供養の日数を、死亡の前日から数える地域と当日から数える地域があります。七七日が忌明けで、「ひあけ」「中陰明け」などと呼び、法要を行ったあと埋葬します。喪家は、忌明けの法要のときに、参列者に引出物を用意するとともに、香典返しを発送します。表書きは「満中陰志」「忌明け志」と記します。

京都府では、忌明けをふつう七七日としていますが、京都市では三か月にこれがまたがるのを避けて、五七日に繰り上げます。香典返しの水引の上から、故人の戒名と施主の氏名を書いた短冊を貼るのが一般 的です。

大阪府では忌明けは七七日です。大阪市の一部では、法事に招かれる人々が、あらかじめ参列する人数の供物を持ち寄って祭壇に供え、帰りにそれを分配する風習があります。持ち寄る品は石鹸や醤油などの日用品が主になります。

近畿地方では、葬儀の日に粗供養として五百円~千円程度の品物を「志」の表書きで渡します。香典返しは四十九日以後、半返しが目安で、「満中陰志」の表書きにします。ちなみに半返しの場合、五千円以上ならタオルケットや肌布団などの繊維製品を、五千円以下には洗剤や石鹸、食料品などが多く利用されています。

中国・四国地方

鳥取県では、忌明けは七七日で、「忌み明け」と呼んでいます。香典返しは、葬儀当日の即返しが一般的ですが、鳥取市などでは、後返しを行い、葬儀当日は「茶の子」と表書きした品を参列した人に配ります。

広島県では、忌明けは七七日で、三か月にかかるときには五七日に繰り上げます。法事は「茶の子」と言い、忌明けの法事は「茶の子」「満中陰志」と表書きした引出物を用意しますが、水引の上から戒名を記した短冊を貼るのが一般 的です。

愛媛県では、忌明けのときに「形見分け香典返し」として約半返し程度の品を贈る習慣があります。贈る対象は、近親者や特別に親交のあった人で、そのときの表書きは、「形見」「志」あるいは「満中陰志」です。

九州・沖縄地方

佐賀県の忌明けは七七日ですが、県内での香典返しは初七日あるいは七七日に行います。

大分県では、忌明けの法要を七七日に行いますが、親族や知人、隣人を招いて会食し、「茶の子」と表書きした品を引出物にします。

一般的に九州地方の香典返しは、四十九日がすんでからの後返しが多く、金額は香典の半額程度です。選ばれる品には、タオルや石鹸、食料品などの実用品が主流となり、表書きは「忌明け」「志」「満中陰志」です。