贈り物
贈る気持ちと、思いやりで
あなたの贈り物を+αに演出!
手みやげの贈り方・受け方は?
改まった訪問の場合
日本では知人やオフィスを訪ねる際、菓子折などを持参する習慣があります。これを手みやげといい、あいさつのしるし、名刺代わりの品とされます。
縁談や就職の世話をお願いするなど、改まった訪問には、手みやげも改まった品がいいでしょう。道すがら買い求めるのではなく、心を込めて選んだ品を事前に用意しておいて礼を尽くします。お菓子なら、老舗や名店の品格の感じられるものがいいでしょう。仲人をお願いするようなときには、祝儀にふさわしくお酒や祝い肴などが適しています。のし紙には「御銘菓」「御肴」あるいは「粗品」と表書きし、下には姓だけでなく名前も記すのが正式です。
先方であいさつをしたあと「ごあいさつのしるしに」と言って、風呂敷から取り出し両手で差し出します。手みやげを出されたら、ありがたく頂戴し座敷の高いところに納め、つぎにその場を離れるときに持って出るようにします。
お返しはいりませんが、風呂敷や盆ごと出された場合は半紙を折ったお移りを入れて帰すのがしきたりとなっています。
親交が目的の場合
友人と会いおしゃべりをたのしむような訪問は、親交を深めるのが目的です。この場合の手みやげは、形を整えたり、気取ったりする必要はありません。手づくりのケーキやジャム、庭に咲いた花なども喜ばれるでしょう。
一般的には先方の好みに合わせ「おいしそうだったので」といった感じで、お菓子やおつまみ、お酒などを選びます。悩んだときには親しみやすい花なども素敵なプレゼントになります。
花を贈る場合にのし紙はいりませんが、菓子折なら無地のし、自家製の品なら手元にある紙でラッピングします。若い方なら、リボンを用いるとおしゃれでしょう。受け取るほうも体裁ではなく、率直な気持ちを表すことが大切です。手みやげを出されたら「さっそく開けさせていただきます」と断って、その場で包みを開きましょう。包みを開いたら、すぐに「うれしい」とか「素敵」と感想を伝えます。品物が花なら、すぐ花瓶に活けて部屋に飾り、食品は器に盛って「おもたせをいただきましょう」と勧めます。食品の場合、自分の好きな品を選んで買うのが人情ですから、その場で一緒に味わうようにするといいでしょう。その場で開けて、喜びを表すという方法は日本の古い作法では好ましくない行為でしたが、欧米社会ではこれがマナーです。親しい間柄には欧米風のほうが合っているのではないでしょうか。
餞別を贈るときは?
親しかった方に新しい環境で役立つ品を
餞別には、転居・転職する方へそれまでのつき合いに感謝し「これからもよろしく」「お元気で」と心を込めて贈る場合と、旅行に出る方へ贈る場合とがあります。過去のつき合い方や関係、年齢に応じて、お互いにそれぞれの立場にふさわしい餞別を贈り合いたいものです。
転居・転職の場合は、とくに親しくしていた近所の方や職場仲間に、新しい環境で役立つ品をお別れの二~三週間前から当日までに贈るといいでしょう。たとえば、転居の場合は家庭用品やその地域の産物など、転職の場合も身のまわり品や事務用品、女性にはスカーフやハンカチ、花などが考えられます。体裁は、紅白五本の結び切りの、のし紙かりボン掛けに「餞別」「はなむけ」などと表書きします。餞別へのお返しは必要ありませんが、新しい土地や職場に無事移ったという報告を添えて必ず礼状を出しましょう。とくにお礼がしたい場合は新しい生活に慣れたころ、その土地の名産、特産などを贈るといいと思います。
旅行の餞別には旅先で重宝するものを
旅行する人への餞別については、特別の目的や立場での旅行に限って餞別を贈るというのが一般的と言えるでしょう。特別というのは、たとえば社会的に重要な意味のある会議や会合に出席する場合、何かの代表として催しなどに参加する場合が考えられます。ほかには、長期間海外に滞在するような場合もあります。修学旅行に行く学生に親やきょうだいがおこづかいの足しにと贈る場合や、老親に子供たちから贈る場合は、家庭内で自由に考えるといいでしょう。
贈る時期は、旅の準備を始めるころから出発の一両日前まで、あるいは旅仕度の足しにと考えるならば早めに。間近に追ってからは現金などかさばらないものを贈るようにします。現金がもっとも便利ですが、ある程度まとまった金額を贈ることになるので「ちょっと気持ちだけ」という場合には早めに品物を贈りましょう。海外旅行なら、目的地で役立つ品や携帯に便利な品、ほかには薬、洗剤、現地の地図やガイドブック、もちろん現地の知人を紹介するのも最高に役立つプレゼントです。空港を降りてすぐに使えるコインなども気軽な餞別として適しているでしょう。体裁は紅白蝶結びの水引きで「はなむけ」と表書きを。
お餞別はうれしいけど、おみやげが結構負担になるという話もよく聞きます。ガイドブックなどであらかじめどんな品がおみやげに適しているか調べて、送り先と品物のリストをつくっておくと迷わず買い物ができていいでしょう。
祝儀・チップの渡し方は?
分相応、サービス相応な金額を渡す
贈りもののなかでいちばん難しいものは、祝儀・チップだと言えます。チップが日常の習慣となっている国ではおよその金額が決まっているので、性別、年齢を問わず差し出せますが、日本のようにその決まりや習慣が定着していない場合、ぎこちなさが伴いがちです。
祝儀もチップも「気持ち」が大切ですから、その気持ちを素直に表すのが基本。それを現金で示すには分相応に、また相手の好意やサービスにも相応であるべきです。たとえば、経済力のない若い人が祝儀を渡すのは不自然ですし、受ける側も負担になってしまいます。あくまで分をわきまえた贈りものというのが、祝儀やチップの大切な点です。
祝儀やチップはサービスを受けたあとに
日本でチップが必要と考えられるのは、高級クラブやゴルフ場など欧米の習慣を受け継いだ施設やサービスを利用した場合、日本旅館や料亭,美容着付けなど日本で祝儀が習慣化しているものを利用する場合です。しかしながら、これらの中にはサービス料が正規の料金に加算されている場合があります。こういったときには必ずしもチップや祝儀が必要とは限りません。このほかには、サービス業を利用した際、正規のサービス以上に余分な手間をかけさせたりした場合に感謝の気持ちを表して贈ります。
祝儀やチップは、そのサービスを受けたあとに渡すのがマナー。先に渡して「これでしかるべくお取り計らいを・・・」というのは避けましょう。男女同伴の場合は男性が渡し、女性だけの場合はその中の年長者が渡すのがエチケット。ゴルフ場ではハンディの上の人。ゴルフ場やクラブなどではとくに注意したいものです。
餞別の由来
もともと「餞別」は、旅立つ人に対して贈るもの。昔の旅は交通面で困難を伴うものでしたから、出発の前に身を清めてお祓いをしたり、隣人や親類を招いて別れの宴などを行い水杯をかわしたりしていました。「餞別」の「餞」には「酒食を供えて食べさせる」の意味があり、文字どおり「共に食べて別れる」ということになるわけです。そして、その宴の席で食べものやお守りなどを贈ったのが「餞別」の始まりとされています。
しかしいまでは、旅といえばレジャーのひとつ。交通機関も発達して、誰もが気軽に出かけられる時代になりました。ですから、現在では旅に出る人に餞別を贈るのは、特別な場合や身内などのごく親しい間柄のみ。それよりもむしろ転居や転勤をする人へ、これまでのおつき合いに感謝の意を込めて金品やはなむけの言葉を贈ることを餞別というほうが一般的でしょう。