香典返しは、時間を割いて葬儀・告別式に参列し、お供えいただいたご厚志に対して、お悔やみいただいた方々に感謝の気持ちを伝える習わしです。香典返しの品物をお贈りする際には、その感謝の気持ちを表すため、また忌明けの法要が滞りなく終えたご連絡をするために、ご挨拶状・お礼状(挨拶状)を添えるのが一般的です。ただご挨拶状は、宗教によって使う言葉が異なり、どう書いたらよいか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、香典へのお礼の伝え方や注意点と共に、そのまま使えるお礼状(挨拶状)の例文をご紹介します。宗教ごとのお礼状(挨拶状)の例文や書き方のポイントについても詳しくご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
香典へのお礼はどう伝える?
香典をいただいたときは、お礼の言葉を伝えるのがマナーです。香典へのお礼は、本来対面または電話で伝えるのが一般的でしたが、現代はお礼の伝え方も多様化しています。
香典をもらったときは忌明け後にお礼を贈るのが一般的
香典をもらったときは、四十九日が終わった忌明法要後に香典返しの品とお礼状(挨拶状)を添えてお礼を伝えるのが一般的です。忌明法要後に、香典をいただいたことへのお礼と共に、無事に四十九日法要を終えたことを報告します。
一般的に忌明けは故人が亡くなってから四十九日とされていますが、神式では五十日祭、または三十日祭を忌明けとする場合も。また、キリスト教の場合は忌明けの慣習がないため、宗教によって香典へのお礼の言葉を伝えるタイミングは異なります。
詳しい香典返しの時期は、こちらの記事をご覧ください。
香典へのお礼の言葉を伝える方法
香典をいただいた際、お礼の言葉を伝えるには主に次の4つの方法があります。
- ・対面で伝える
- ・電話で伝える
- ・お礼状(挨拶状)で伝える
- ・メールで伝える
本来、香典のお礼は忌明け後にお礼の品を持って、一軒ずつ挨拶回りをしていました。しかし、近年は生活スタイルの変化などにより、電話やお礼状(挨拶状)でお礼の言葉を伝えるケースが増えています。
また、電話番号を知らない方や、特に親しい方には、メールやLINEで香典のお礼を伝えるケースもあるようです。すぐにお礼ができない場合や、香典返しを辞退された場合など、取り急ぎ感謝の気持ちを伝えたい場合に活用するとよいでしょう。しかし、香典のお礼を伝えるマナーとして、あまり好ましく思わない方もいます。メールやLINEで香典へのお礼を伝える際は、略式でのご挨拶になるお詫びと共に、後日正式にお礼をする旨伝えておきましょう。
香典のお礼の言葉を伝える際の注意点
香典のお礼を伝える際、注意しておきたいポイントがいくつかあります。いただいたことへの感謝の気持ちが伝わるよう、ひとつずつ確認しておきましょう。
お礼状(挨拶状)は1枚にまとめ、二重封筒は使用しない
香典のお礼状(挨拶状)を贈る際は、1枚の用紙にまとめて贈るのがマナーです。複数枚の便せんや二重封筒は「不幸が重なること」を連想してしまうため、弔事の手紙には不向きとされています。
また、お礼状(挨拶状)に使用する便せんは、白無地の「奉書紙」を使用するのが一般的です。近年はデザイン性の高いはがきタイプを取り入れているケースもあります。お礼状(挨拶状)の用紙は自分で用意する場合もありますが、香典返しの商品を購入したときにお店で準備してもらえることも。必ず手書きである必要もないので、贈る数量やお相手にあわせて奉書紙とはがきタイプどちらかを選ぶとよいでしょう。
句読点は使わない
香典のお礼状(挨拶状)を書く際は、文中に句読点を使いません。句読点は、本来文章を読みやすくするための記号であり、弔事で使用するのは失礼ととらえる方もいます。また、句読点を使うことで文章の流れが止まってしまうため、法事が滞りなく済んだと伝える香典のお礼状(挨拶状)には不適切とされる場合も。
香典のお礼状(挨拶状)では句点の位置に改行、読点の位置にはスペースを用いて、本文を書くのがマナーです。
「たびたび」「ますます」など忌み言葉を使用しない
たびたびやますますなどの重ね言葉は、弔事では忌み言葉とされ、香典のお礼状(挨拶状)では使用できません。忌み言葉とは縁起が悪いとされる言葉をさし、弔事では「重ね言葉」「不幸が続くことを連想する言葉」「生死に関わる言葉」はタブーとされています。
香典のお礼状(挨拶状)に不向きな忌み言葉の一例を挙げると以下の表の通りです。
重ね言葉 | ||
くれぐれ | たびたび | ますます |
ときどき | まだまだ | しばしば |
不幸が続くことを連想する言葉 | ||
さらに | 引き続き | 重ねて |
繰り返し | ようやく | やっと |
生死に関わる言葉 | ||
死去 | 死亡 | 生きる |
四(=死を連想する) | 九(=苦を連想する) | 生存 |
また、宗派によって忌み言葉が異なるケースもあるため、お礼状(挨拶状)を書く際は注意が必要です。神式、キリスト教式では「冥福」「成仏」「供養」などの言葉は、使用しないことがほとんどです。知らなかったとしても忌み言葉を使用するのはお相手に失礼にあたるため、事前に問題がないか確認してからお礼状(挨拶状)を作成しましょう。
季節の挨拶は入れない
一般的なお手紙とは異なり、香典へのお礼状(挨拶状)には原則季節の挨拶は入れません。季節の挨拶とは「秋になり涼しくなってまいりましたが」のような季節感のある一文を指します。
香典へのお礼状(挨拶状)はどなたにも贈れるような文面が好ましいとされているため、簡潔に感謝の気持ちを綴るとよいでしょう。また、頭語と結語も香典のお礼状(挨拶状)にはなくても問題はないとされています。ただし、「謹啓」など頭語を書き始めに使用した場合は、必ず「謹白」など、結語もセットにするのを忘れないようにしましょう。
メールやLINEの場合は、後日正式なお礼をする
親しい友達、お世話になった親戚など、故人と特に親しかったお相手には、メールやLINEでお礼の言葉を伝えても失礼にはあたらないとされています。香典へのお礼が遅れてしまいそうな場合など、早くお礼の言葉を伝えたいときはメールやLINEを活用するとよいでしょう。
ただし、メールやLINEだけだとお相手から「適当に扱われた」と思われてしまう可能性があります。後日、正式に香典返しにお礼状(挨拶状)を添えて、感謝の言葉を伝えましょう。
香典のお礼を伝える際にそのまま使える例文集
ここからは香典のお礼を伝える際に、そのまま使える例文をシーン別にご紹介します。例文は正式なお礼状(挨拶状)である奉書タイプはもちろん、近年は、親戚などにカジュアルにお礼を伝える方法として、カードタイプの略式挨拶状を添えるケースも増えています。
一般的な香典のお礼状(挨拶状)の例文
どなたにも贈れる一般的な香典へのお礼状(挨拶状)の例文を紹介します。
つきましては 供養のしるしに心ばかりの品をお送りいたしましたので 何卒ご受納くださいませ
本来であれば拝眉の上御礼申し上げるところ 略儀ながら書中をもってご挨拶にかえさせていただきます
令和◯年◯月◯日 ◯◯◯(氏名)
一般的なお礼状(挨拶状)に使用できる例文で、忌み言葉を避ければ細かい部分は変更しても問題ありません。
親しい方へ送る香典のお礼状(挨拶状)の例文
故人と特に仲の良かった友達や親戚、お世話になった職場の方からいただいた香典へのお礼状(挨拶状)は、一般的なものよりも温かみある文面が好まれます。ここでは「親しい友人・親戚」と「職場関係の方」へ贈るお礼状(挨拶状)の例文をご紹介します。
【親しい友人・親族からの香典へのお礼状(挨拶状)】
父は生前 ◯◯様との旅行や集まりなどの予定を楽しみにしておりました 旅行の計画を立てて 楽しそうにしていた父の姿を思い出します
改めて過分なお心遣いに厚く御礼申し上げます おかげさまで滞りなく四十九日の法要を済ませることができました
感謝のしるしといたしまして 心ばかりの品をお送りいたしました 何卒お納めくださいますようお願い申し上げます
本来であれば直接ご挨拶にうかがい御礼をすべきところ 略儀ながら書中にてご挨拶申し上げます
令和◯年◯月◯日 ○○○(氏名)
【職場関係者からの香典へのお礼状(挨拶状)】
おかげさまをもちまして 四十九日の法要を無事に営むことができました
ささやかながら供養のしるしをお送りいたしましたので 皆様でお納めいただきますよう何卒お願い申し上げます 出社後改めてご挨拶させていただきますので 今後ともご指導のほどよろしくお願い申し上げます
令和◯年◯月◯日 ○○○(氏名)
メール・LINEで香典のお礼を伝える際の例文
親しい間柄であれば、香典のお礼の言葉をメールやLINEで伝えても失礼ではないとされています。また、忌引き休暇等ですぐに香典のお礼が伝えられないときに、ひとまずお礼の気持ちを伝える方法としてメールを送るケースもあります。香典返しを辞退されている方への意向に沿いつつお礼の言葉を伝えたい場合も、メールは便利です。
メールやLINEで香典のお礼を伝える際は、次の4つのポイントを押さえておきましょう。
- ・「御香典のお礼」などわかりやすい件名にする
- ・句読点は打たない
- ・略式でのお詫びとお礼の言葉を添える
- ・改めてお礼をする旨伝える
ポイントを押さえたメール・LINEの例文は以下の通りです。
本文:この度は 父◯◯◯の葬儀に際しまして 過分なお心遣いを賜り 心より御礼申し上げます
おかげさまで つつがなく四十九日の法要を終えることができました
略儀ではございますが 取り急ぎメールにてお礼かたがたご挨拶申し上げます
令和◯年◯月◯日 ○○○(氏名)
宗教別のお礼状(挨拶状)の例文・書き方のポイント
ここからは宗教別の香典へのお礼状(挨拶状)の例文、基本的な書き方のポイントを紹介します。
仏式のお礼状(挨拶状)の例文・書き方のポイント
仏式のお礼状(挨拶状)は忌明けの四十九日法要後に、香典返しの品に添えて贈るのが一般的です。しかし、仏式でも浄土真宗は、故人が亡くなってすぐに仏になると考えられているため、四十九日まで待たずに初七日が終わって1ヶ月程度を目安に贈るのが一般的です。また、戒名がある場合は、ご報告も兼ねてお礼状(挨拶状)に記載しておくとよいでしょう。
仏式のお礼状(挨拶状)のポイントは次の3つです。
・故人との続柄に「亡」を使う(「故」を使う場合もあり)
亡父、亡母、亡祖父、亡祖母(故父、故母、故祖父、故祖母)
・亡くなったことを表す言葉「死去」「永眠」
・法要名「忌明けの法要」など
仏式のお礼状(挨拶状)の例文
御尊家御一同様愈々御清祥のこととお慶び申し上げます
過日 亡母(続柄) 花子(俗名) 儀
死去の際は 御懇篤なる御弔意と過分なる御厚志を賜り御厚情の程
誠に有難く厚く御礼申し上げます
おかげをもちまして忌明けの法要を滞りなく相営みました
早速拝眉の上 親しく御礼申し上げるのが本意でございますが書中をもって御礼かたがた御挨拶申し上げます
敬具
令和 年 月 日
○○○○
追伸 忌明けのお印までに粗品をお届けさせて頂きましたので御受納下さいます様お願い申し上げます
キリスト教式のお礼状(挨拶状)の例文・書き方のポイント
キリスト教式のお礼状(挨拶状)は、仏教用語を避けるのがポイントです。また、カトリックとプロテスタントどちらの宗派かで、使う言葉が異なります。お礼状(挨拶状)を贈る時期はカトリックの場合は故人が亡くなってから30日目の「追悼ミサ」、プロテスタントでは一ヶ月後の「召天記念日」の後が一般的です。
キリスト教式のお礼状(挨拶状)のポイントは次の3つです。
・故人との続柄に「故」を使う。故父、故母、故祖父、故祖母
・亡くなったことを表す言葉「召天」
・法要名「記念会」など
キリスト教式の挨拶状の例文
御尊家御一同様愈々御清祥のこととお慶び申し上げます
過日 故母(続柄) 花子(俗名) 儀
召天の際は 御懇篤なる御弔意と過分なる御献花を賜り御厚情の程
誠に有難く厚く御礼申し上げます
おかげをもちまして 記念会を滞りなく相営みました
早速拝眉の上 親しく御礼申し上げるのが本意でございますが書中をもって御礼かたがた御挨拶申し上げます
敬具
令和 年 月 日
○○○○
追伸 偲び草のお印までに粗品をお届けさせて頂きましたので御受納下さいます様お願い申し上げます
神式のお礼状(挨拶状)の例文・書き方のポイント
神式のお礼状(挨拶状)では、亡くなったことを「帰幽」と表現します。神式のお礼状(挨拶状)を贈る時期は、故人が亡くなってから50日目に行なわれる「五十日祭」の後が目安です。
神式のお礼状(挨拶状)のポイントは次の3つです。
・故人との続柄に「故」を使う。故父、故母、故祖父、故祖母
・亡くなったことを表す言葉「帰幽」
・法要名「五十日祭」など
神式のお礼状(挨拶状)の例文
御尊家御一同様愈々御清祥のこととお慶び申し上げます
過日 故母(続柄) 花子(俗名) 儀
帰幽の際は 御懇篤なる御弔意と過分なる御玉串料を賜り御厚情の程
誠に有難く厚く御礼申し上げます
おかげをもちまして 五十日祭を滞りなく相営みました
早速拝眉の上 親しく御礼申し上げるのが本意でございますが書中をもって御礼かたがた御挨拶申し上げます
敬具
令和 年 月 日
○○○○
追伸 偲び草のお印までに粗品をお届けさせて頂きましたので御受納下さいます様お願い申し上げます
天理教式のお礼状(挨拶状)の例文・書き方のポイント
天理教では五十日祭の後を目処に、お礼状(挨拶状)を贈るのがマナーです。天理教は亡くなったことを「出直し」と呼ぶため、「永眠」や「帰幽」などほかの宗派と誤らないように気をつけましょう。
天理教式のお礼状(挨拶状)のポイントは次の3つです。
・故人との続柄に「故」を使う。故父、故母、故祖父、故祖母
・亡くなったことを表す言葉「出直し」
・法要名「五十日祭」
天理教式のお礼状(挨拶状)の例文
御尊家御一同様愈々御清祥のこととお慶び申し上げます
過日 故母(続柄) 花子(俗名) 儀
出直しの際は 御懇篤なる御弔意と過分なる御献花を賜り御厚情の程
誠に有難く厚く御礼申し上げます
おかげをもちまして 五十日祭を滞りなく相営みました
早速拝眉の上 親しく御礼申し上げるのが本意でございますが書中をもって御礼かたがた御挨拶申し上げます
敬具
令和 年 月 日
○○○○
追伸 偲び草のお印までに粗品をお届けいたしますので御受納下さいます様お願い申し上げます
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